kaiunmanzoku's bold audible sighs

Be love Be peace Be harmony Be compassion Be joy

Wherever there is a human being, there is an opportunity for a kindness. 引用・転載はご自由に。ただし、引用元・転載元だけ明記ください。 Feel free to copy and reprint but please just specify an origin of quotation.

南朝皇統デマ 1457年12月以降、南朝の皇統を継ぐ血統は史実上絶えている

長禄元(1457)年12月の「長禄の変」以降、南朝の皇統を継ぐ血統の行方は、現存する史実では未確認状態です(2017年3月8日17時現在)。

 

未だに動画サイト等で、南朝の皇統を継ぐ人物が幕末に存在したということを紹介しているものが見受けられ、巷間に流布するデマの信者が絶えないようです。

しかし、そのいずれも根拠が乏しいものばかりです。

先に一度、私のブログに書いたのですが、誰も見てくれていないようなので、もう一度多少は読者の多いこのブログに書き直しておきたいと思います。

先のブログはこちら:

南朝の皇統を継ぐ人物が幕末に存在したということを紹介している動画サイト等について - kaiunmanzokuのざれごと、たわごと、綺麗事

 


「長禄の変」以降の南朝の血統の行方は現在に至るまで不明であり、新しい史料の発見がない以上、南朝皇統の血統は絶えたと判断するしかありません。


その「長禄の変」を記す最後の信用できる史料(上月記、赤松記)が記していることに着目していただきたいと思います。

f:id:kaiunmanzoku:20150614141104j:plain


上の画像は、現代史の一人者である秦郁彦先生の「昭和史の謎を追う熊沢天皇始末記の一節からスキャンした画像です。
南朝の血統の行方を記す最後の信用できる史料が記す「長禄の変」について説明がなされています。

田中義成博士「南北朝時代史」の長禄の変の項に、室町時代の長禄元年12月2日(1457年12月27日)に赤松満祐の遺臣らが謀略をもって後南朝の行宮を襲い、南朝の皇胤である一宮(自天王)と二宮(忠義王)の兄弟を討って、神璽を奪って朝廷に還した旨の記述が「吉野の山奥に尚南朝の皇子二人御座し・・・・・共に御名並びに御系統を審らかにせず・・・」とあります。この上月記、赤松記を紹介して、これ以上の史料がまだ発見されておらず、今後も期待が出来そうもないと論じられています。

特に共に御名並びに御系統を審らかにせず」には後南朝系の記録が徹底的に抹殺破壊されたことも含まれる表現であることにご留意いただきたいのです。

自天王」・「忠義王」が本名でないことも、この表現でお分かりいただけると思います。本文には「一宮」「二宮」とだけ記されているのです。そんな痛ましい限りの(後南朝系の記録が徹底的に抹殺破壊された)状況が上月記、赤松記に記されている共に御名並びに御系統を審らかにせず」なのです。

 

正統な歴史に史料を以って異議を唱えるのは学問の自由でよろしいが、インターネット上で真実であるかのようにデマを広げて貰っては困るのです。根拠を示す史料がない場合は、自分の意見であることを示すか、創作や空想、仮説の類であることが分かるよう明記するべきと思います。

 

余談ですが、足利尊氏を悪玉に楠木正成を善玉にする南朝正義説ともいえる南朝イデオロギーのバックボーンは意外にも水戸光圀楠木正成礼賛に元を置く歴史が浅いものです。

少し考えてみて下さい。

北朝は、持明院統後嵯峨天皇(88代)の長子である後深草天皇(89代)に始まります。一方、南朝大覚寺統後嵯峨天皇次子である亀山天皇(90代)が始祖です。

明治憲法以降の皇室典範は明確に長子相続を規定しています。この論理で言えば皇位継承の正当性は北朝にあると言えるではないでしょうか。後醍醐天皇大覚寺統であり傍流出身のために治天の地位に就く権利が否定され、子孫への皇位継承が出来ない天皇であったことも忘れられがちです。

この問題は、章を改めて述べる機会があればそうしたいと思います。

幕末維新の南朝イデオロギー水戸光圀が生み出し、山形有朋が明治政権の基礎作りに用いたプロパガンダと考えても良いと思っています。

今後新しい史料の発見が報じられることなく、南朝の皇統が論じられることがあるようなら、それはデマゴーグであるとだけ言っておきます。

 

 

 

 

Wherever there is a human being, there is an opportunity for a kindness. 引用・転載はご自由に。ただし、引用元・転載元だけ明記ください。 Feel free to copy and reprint but please just specify an origin of quotation.