【ヒストリー(History)で放送された内容の概略】
世界一周飛行中の1937年に消息を絶った米国の女性飛行士、アメリア・イアハート(Amelia Earhart)についての新たな証拠を発見したとするドキュメンタリー番組「アメリア・イアハート:失われた証拠(Amelia Earhart: The Lost Evidence)」が2017年7月9日、歴史番組専門チャンネル「ヒストリー(History)」で放送された。
この番組によると、伝説の飛行士である彼女とナビゲーターのフレッド・ヌーナン(Fred Noonan)の2人は生き延びて、日本軍の捕虜になった可能性があるという。
証拠としているのは、米国国立公文書館(US National Archives)で見つかった不鮮明な白黒写真だ。そこに写っているのが、拘束後にマーシャル諸島(Marshall Islands)にいる2人の姿だという。
参考:7月7日AFP
写真はジャルート環礁(Jaluit Atoll)の波止場にいる人々を撮ったもの。
ヒストリー・チャンネルが「体形がイアハートに似ている上に、彼女と同じようにズボンをはいているように見える。また、髪形も彼女が好んでいたのと同じ短髪だ」という人物がこの写真のどの人物かわかるだろうか。
この人物だ。
同じくヒストリー・チャンネルが「女性のそばに立つ男性は白人の可能性があり、番組は顔認識の専門家の話として、髪の生え際がヌーナンに酷似していると指摘」という人物は、この人物を指すということだ。
「波止場の奥に写った船が小舟でけん引しているのは、墜落したイアハートの双発機ロッキード・エレクトラ(Lockheed Electra)かもしれない」という物体。
エグゼクティブプロデューサーのギャリー・ターピニアン(Gary Tarpinian)氏が米NBCのニュース番組に、「われわれは、コウシュウが(マリアナ諸島<Mariana Islands>の)サイパン(Saipan)島に(イアハートを)連行し、彼女はそこで日本人に拘束されたまま死亡したと考えている」と語った。
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【反論】
山猫男爵さんのブログのおかげで、我々はこの写真を
国立国会図書館デジタルコレクション - 海の生命線我が南洋の姿 : 南洋群島写真帖
のなかで見ることができる。
説明詳細によると、この本は昭和10(1935)年に当時日本の統治下にあった南洋パラオ島コロールで発刊された。つまり、昭和12(1937)年にアメリア・イアハートが消息を絶つ、少なくとも2年前までに撮られた写真である。したがって、写真の人物はアメリア・イアハートではありえないのだ。
【結論】
「失われた証拠」と称する写真は、アメリア・イアハートが消息を絶つ、その少なくとも2年前までに撮られたものであり、写真の人物は彼女ではないのだ。
【付録】
イアハートの乗っていた双発機ロッキード・エレクトラ(Lockheed Electra)は、尾翼の左右にそれぞれ方向(垂直)舵が付いている(方向舵が二つある)。上記の写真の飛行機と思しき物体には方向舵は真ん中にひとつあるだけだ。
下記画像はここから: アメリア・イアハート - Wikipedia 尾翼に注目だ。
測量艦 膠州 上の画像と前後逆なのだろうか。この船なのかどうかは判断する材料がない。
その他:武装した日本兵の姿も日本人の姿も見当たらない。