「昔見たあのブラックホールの画像はいったい何だったの?」と思ったあなたのために
「史上初、ブラックホールの撮影に成功」の凄さが分かりにくいので、参考部分に画像で説明を入れてみた。
このブログの下の方の「参考」を読んでいただきたい。
プレスリリース - 史上初、ブラックホールの撮影に成功 ― 地球サイズの電波望遠鏡で、楕円銀河M87に潜む巨大ブラックホールに迫る - アルマ望遠鏡
イベント・ホライズン・テレスコープの建設と今日発表された観測成果は、何十年にもわたる観測的・技術的・理論的取り組みの賜物です。さらに、世界中から集まった研究者たちの緊密な連携の結果でもあります。イベント・ホライズン・テレスコープを実現するために13のパートナー機関が力を合わせ、既存の観測装置を活用するとともにさまざまな機関からの支援も受けて活動してきました。主要な資金援助は、アメリカ国立科学財団と欧州連合の欧州研究会議、そして東アジア地域の資金配分機関からのものです。
日本の研究者も、さまざまな面でこの研究に貢献しました。まず、日本と台湾・韓国、北米、欧州が共同で運用するアルマ望遠鏡は、観測に参加した望遠鏡の中でもっと感度が高く、イベント・ホライズン・テレスコープ全体の感度の向上に大きな貢献をしました。また、アルマ望遠鏡をイベント・ホライズン・テレスコープの一員とするために、山頂のアンテナ群から山麓施設にデータを伝送する装置は国立天文台が開発しました。さらに、日本はアジアのパートナーと共に東アジア天文台を設立しており、東アジア天文台がハワイのジェームズ・クラーク・マクスウェル望遠鏡の運用を担っています。
「日本の研究者は、ソフトウェアや研究においても貢献をしています。私たちは、『スパース・モデリング』と呼ばれる新しい手法をデータ処理に取り入れました。これにより、限られたデータから信頼性の高い画像を得ることができました。最終的には、4つの独立した内部チームが3つの手法でデータの画像化を行い、いずれもブラックホールシャドウが現れることを確認しました。」と、イベント・ホライズン・テレスコープ日本チームの代表である本間希樹 国立天文台教授・水沢VLBI観測所長は語ります。研究チームの一員で、2019年3月まで国立天文台に在籍し現在はマサチューセッツ工科大学ヘイスタック観測所に移った森山小太郎研究員は「さらに私たちは、具体的な方法を変えながらおよそ5万通りもの画像化を行い、得られたブラックホールシャドウの画像の特徴が本当に信頼できるものであるかを入念に確かめました。」と語っています。
同じく研究チームの一員である田崎文得 国立天文台水沢VLBI観測所特任研究員は、「日本独自の手法でデータを解析し、ブラックホールシャドウの画像化に成功した時は、本当に興奮しました。さらに画像化の成功を世界中の仲間と共有できたことは、これまでで最も幸せな瞬間の一つです。」とその喜びを語っています。
また、台湾中央研究院天文及天文物理研究所の小山翔子 博士研究員は「画像化の前段階でも、独立に開発された3つの手法で解析を行い、解析結果が十分に一致することを検証しました。こうした途中経過にスポットライトが当たることはあまりありませんが、研究の一ステップごとにチームメンバーが緻密な努力を積み重ねてきたことが、今回の成果につながったのだと思います。」と語っています。
参考
下の画像は今回報じられたブラックホール(楕円銀河M87)と異なる天体(NGC4261銀河)の画像だ。この画像に見覚えがある方もいるだろう。
この画像は2002年11月1日発行 2004年5月10日第2刷 のNewton別冊に掲載のもので、ハッブル宇宙望遠鏡が撮影し、ガス円盤の中心から噴出する電波ジェットを観測できたとして有名なものだ。
これにはブラックホールは映っていない。中央にある明るい白い点の「奥」にガス状の降着円盤があり、その中に「ブラックホールが存在していると考えられる」とされている画像だ。
今回の成功は、この白い点のようなところを、さらに極小の針で突いたような部分に存在するブラックホールを画像として捉えたものだ。
いかに画期的であるかが分かると思う。
2003年のNewton別冊(下図)には、その白い点の解説図が掲載されている。
この左側の四角で囲まれた部分の撮影に成功したのだ。