古事記本文
於是天皇 登高山見四方之國 詔之 於國中烟不發 國皆貧窮 故自今至三年 悉除人民之課役 是以大殿破壞 悉雖雨漏 都勿修理 以受其漏雨 遷避于不漏處 後見國中於國滿烟 故爲人民富 今科課役 是以百姓之榮 不苦役使 故稱其御世謂聖帝世也
読み下し
ここにおいて天皇(すめらみこと)、高き山に登り四方(よも)の國を見て詔りたまわく、「國の中に烟(けぶり)發(た)たず、國、皆、貧窮(まづ)し。故、今より三年(みとせ)に至るまで、悉く人民(おおみたから)の課役(えつき)を除(ゆる)せ。」と。
是を以ちて大殿(おおとの)破れ壞(こぼち)て、悉く雨漏ると雖ども 都(かつ)て修理(つくろ)うこと勿(な)し。 (はこ)を以ちて其の漏る雨を受け、漏らぬ處に遷(うつ)り避(さ)りたまふ。
後に國の中を見るに國に烟(けぶり)滿ちき。 故、人民(おおみたから)富めりと爲(おもほし)て、今、課役(えつき)を科(おお)せたまふ。
是を以ちて百姓(おおみたから)榮え、役使(えだち)に苦しまず。 故、其の御世を稱(たた)えて聖帝(ひじりのみかど)の世と謂う。
現代語訳
あるとき天皇は高い山にお登りになって、国の四方をご覧になり、「国の中のどこにも炊煙が登っていないのは、国民がみな貧しく窮しているからである。したがって、今から三年の間、わが民の労役と租税を全て免除せよ。」と仰せになられた。
このために、皇居は破れ壊れて、どこもかしこも雨漏りがする有様でしたが それでもその3年の間は修繕をなされない。木の箱を置いて漏る雨を受けたり、自ら雨漏りのないところに身を動かして雨水を避けていらっしゃった。
3年の後、国の中を見てみると国中に炊煙が立ち登っていた。そこで、我が民は充分豊かになった、今から労役と租税を命じると仰せになった。
こうして、全ての民が子孫繁栄し、労務や税に苦しむことが無くなった。そういうわけで全ての民が、この天皇の御代を称えて、聖帝の御代だと言うのである。
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