多核種除去設備等処理水について、もし真摯に風評被害を恐れるというなら、不慮の事故が次に起きる前に、計画的に海に放出してしまうべきだ。管理されているトリチウムを恐れる必要は微塵もない。
1.トリチウムの性格:東京電力のHP記載の下記の記述は簡易で素晴らしい。
○化学上の形態は、主に水として存在し、私たちの飲む水道水にも含まれています
○ろ過や脱塩、蒸留を行なっても普通の水素と分離することが難しい
○半減期は12.3年、食品用ラップでも防げる極めて弱いエネルギー(0.0186MeV)
のベータ線しか出さない
○水として存在するので人体にも魚介類にも殆ど留まらず排出される
○セシウム-134、137に比べ、単位Bqあたりの被ばく線量(mSv)は約1,000分の1
2.トリチウムの持つ放射脳については、次の説明が効果的だ。
バナナにはカリウム40の形で天然起源放射性物質が含まれていることは有名だが、バナナを1本食べたときに人体が受ける線量は、およそ0.1マイクロシーベルトと言われている。
トリチウムと同程度の被曝とは、バナナで考えるといったい何本分を食することなのかを計算してみると、1本のバナナを333等分して、その一つを摂取するのに等しい。トリチウムの単位当たりの被ばく線量はバナナ1本分の 1,000分の3 しかない。
3.トリチウムが身近な存在であることの啓蒙をすべきこと
基礎知識としてトリチウムは水素の存在する場所で普通に存在する。例えば、水道等の飲用水の中にもごく普通に存在し、飲用して危険がないとの許容量は1リットル当たり6万ベクレル未満だ。放射されるベータ線は(人体内でもほぼ同じだが)水中では原子核から0.01mmの距離で消滅してしまうからだ。ベータ線を放出した後は普通の水素か重水素に変わる。
ちなみに、水素は、多くの化合物に含まれているので工業用に用いられる可燃性ガスの殆どがトリチウムと一緒に生産されている。例えば水素化合物であるアンモニア化合物は肥料としても用いられ、トリチウムは食物としても人の体内に取り入れられている。原発だけがトリチウムを生産しているわけではない。全ての化学工場で水素を使わずに生産活動が出来るとは思えないし、家庭でもその製品群の恩恵なしに現代生活が営めるとは思えない。
世界中の化学工場から出るトリチウムの量については研究資料もないが、化学工場で放射性物質としてのトリチウムの発生量が問題にされないのは、そもそも水素自体が爆発的可燃物として危険性が大きいからだ。今後も世界中の化学工場は大量の水素と共に大量のトリチウムを発生させ続ける事だろうが、それでも放射性物質の発生源として問題になることはないだろう。トリチウムを本当に脅威だと思うのなら国際石油資本から提出させるべきだろうし、燃料電池車が今後将来にわたって増産されていくようなら、本当にトリチウムが怖くてしょうがないという人々は戸外に出ないことだ。燃料電池は水素の工業生産(トリチウム生産)無しでは存在しえない技術なのだ。
世の中からトリチウムを取り除くのは水素化合物全てを取り除くに等しいということだけは、文明社会に住む人々にトリチウムを知ってもらい、その処理を考えてもらう際に、前提として説明し、啓蒙すべき事実の一つと言える。
4.風評やデマの原因と対策も例示して科学を信頼させる必要がある
昔、カメラは魂を吸い取る魔術、ワインは処女の血、だから異人は化け物という者がいた。
今でも、飛行機が怖いという人がいて、バナナに放射性物質が必ず含まれていると教えてあげても、安全の例えとして受け入れず、バナナを怖がってしまう人がいる。
文明の啓蒙とは困難だ。現在でもそのようなデマを信じさせようとする勢力がいる。
重水3.6トンが流出した韓国の月城原発のデマでは、重水3.6トンが「海に流れ出たこと」が問題視されていたが、「原子炉格納容器から重水を喪失させたこと」の方が重大だ。重水3.6トンも喪失した格納容器内の水位についての情報がなかったことに「悪意」を感じる。
(このような、トリチウムデマは日本のエネルギー行政をかく乱させるための中華従北勢力によるプロパガンダのように私には思える。なぜなら、福島にはトリチウム水(多核種除去設備等処理水)が膨大な量になって貯蔵されているのだから。それを思い起こさせようとしたのだろう)
恐怖心や無知を利用して日本のエネルギー政策に、日本の行政に、国会運営に、いらざる混乱をもたらし、エネルギー安保を撹乱したい勢力がいるという事と思う。
5.結論
東電福島のトリチウム水(多核種除去設備等処理水)についても、真摯に風評被害を恐れるなら、事故が起きる前に計画的に海に放出してしまうべきだ。管理されているトリチウムを恐れる必要は微塵もない。