文民統制(シビリアンコントロール)の定義を「文民たる政治家が軍隊を統制するという政軍関係における基本方針」と書く人間は「シビリアンコントロール」を全く知らないし、わかっていない。いわば法律用語文盲だ。
残念ながら、日本では法学者ですらそう思っている節がある。
「文民統制」という日本語の字面だけでこんなことを書いてはいけない。
「(主に)軍事に対して選挙民の意思が反映された政治が優先すること」が原義である。民主による統制である。
文民統制とは、大統領、首相といった内閣が民主的手続きで成立していることが大前提にあって、その大統領や首相が軍のトップを決める事、あるいは首を切れることを言う。
それに対し、防衛責任者を軍が決めたり、軍の推挙する人間から決めたり、いったん決めた人間は軍の許可がなければ首を切ったり、降格できないといった制度の事をシビリアンコントロールが出来ていない体制という。
米国大統領が国防長官を指名したら、その指名は既にシビリアンコントロールの原則下にあるということだ。
前にどこかに書いたが、米国の法制上、軍人が退役後7年間は国防長官に就任できないというのは「文民統制」の話ではない。
文民統制とは、選挙民が影響を及ぼせる範囲の事だ。
簡単に誤解を恐れず例を挙げるなら、地方の検察官や警察署長の場合だ。
米国では町の検察官(地方検事)や警察署長も選挙で選ぶ。彼らは文民統制が効いているわけだ。日本では地裁の検事正や県警の所長は選挙民からかなりの距離がある。文民統制が効いていないという訳だ。
軍人が退役後7年間は国防長官に就任できない規定は「文民統制」とは関係ない「軍に対する影響力の排除」の問題であろう。立法趣旨を調べたわけではないが「文民統制」の問題ではない。
シビリアンコントロールは「選挙民による統制」のことであって、軍人と民間人(文民)という意味ではない。